スチャラカもくれんタマスダれ
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-赤ずきん-

 赤ずきんちゃんはとっても可愛い女の子。今日は大好きなおばあちゃんのおうちへお出かけです。
「おばあちゃん、喜んでくれるだろうな」
「和穂よ。俺が知る限り、あのばばあが喜んでいる光景は見たことがないのだが」
「もう、またそんなひねくれたこと言って。私にはちゃんと分かるんだよ」
 愛犬の殷雷も一緒です。
「誰が犬だ!」
 ああしかし、なんということでしょう。物陰から、赤ずきんちゃんを狙う怪しい影がいることに一人と一匹は気づいていませんでした。
「げっへっへ。うまそうな女の子だな」
 狼の弾勁です。しかし、弾勁が赤ずきんちゃんをおいしく食べるには、愛犬の殷雷をどうにかしなければなりません。
「うーん、骨でつられるほど安っぽいやつでもなさそうだしな」
 ちょうどそのとき、弾勁に名案が閃きました。いくら殷雷でも、家の中までは入ってこれない(だって犬だもん)。そうだ、和穂のおばあちゃんとやらになりすましてやろう。
 そう決めると、弾勁は赤ずきんのおばあちゃんの家に先回りすることにしました。

 おばあちゃんの家についた赤ずきんちゃんは、おばあちゃんのおみやげにしようと手折った野花を手に持っていました。
「おばあちゃん、こんにちわ」
 とんとんと戸をたたいても、お返事がありません。いつもなら、「うるさいよ! さっさと入って来な!」と元気な挨拶が返ってくるのに、おかしいです。
 殷雷がくんくん、とにおをかぎました。
「こ、これは血のにおいだ!」
「えっ、えっ?」
「よし和穂、変身だ!」
「えっ、えっ?」
 和穂は慌てました。突然、変身と言われても困ってしまいます。だいたい、変身がどんなことかも和穂は知りません。
 -まじかる☆プリンセス、ほおりいあ〜〜〜〜ぷ-(アニメ版の独自設定です)
 どこからか懐かしい音楽が流れ、和穂はまじかる☆プリンセスに変身しました。
 その最中、しっかりと和穂の裸を見ていた殷雷が鼻血を吹いて倒れました。
「い、殷雷、しっかりして!」
「和穂……俺はもう駄目だ……最後まで、おまえを守りたかったのに……すまない。がくっ」
「殷雷ーーーーー!」
 殷雷の犠牲でまじかる☆プリンセスに変身した赤ずきんちゃん。無駄にはしないよ、と殷雷の遺体に告げるとおばあちゃんの家に乗り込みます。
「セラヴィー先生&ドロシーちゃん!」
 ……ごめんなさい、やりすぎました。やり直します。

「おばあちゃん!」
 扉を開けた瞬間、むっとする臭気が溢れてきました。このにおいは血のにおいです。
「そんな、おばあちゃんが!」
 赤ずきんちゃんは悲鳴を上げました。奥からのっそりと何かが出てきます。
「どうした、うるさいねえ」
 そこには、朱にまみれたおばあちゃんの姿がありました。鬼婆を視覚化するとこうなるに違いない、というパーフェクトな鬼婆ぶりにさすがの和穂も腰が引けました。
「ああん? 近頃の若い子の服装はよくわからないと思っていたけど、和穂おまえもかい」
 どうやらおばあさんはまじかる☆プリンセスの服装がお気に召さないようです。どうやら敵はいなさそうなので、和穂は変身を解くことにしました。
「……あれ?」
 仙骨が封じられているので、和穂は変身を解く術を忘れていました。でもまあ、三分たてば元通りなのでどうでもいいことです。
「それよりおばあちゃん、その……ペンキをぶちまけたような格好はどうしたの?」
「ああこれか」おばあちゃんは改めて自分の状態に気づいたようでした。
「いや、突然狼が襲ってきてな。ちょっと懲らしめてやったところだ」
 和穂はそうっと奥の部屋をのぞきました。部屋の中は恐怖映画もかくやというスプラッタな有様です。しかし、狼さんはどこにもいませんでした。
「なに!? そこをどきな!」
 おばあさんも部屋を確かめましたが、確かに倒したはずの狼がいなくなっています。
「逃げたか……」
 よく見ると窓が開け放ってあり、そこから点々と血の痕が続いています。ちっ、とおばあさんは舌打ちしました。孫の赤ずきんちゃんにはどうか、こんなおばあちゃんを見習って欲しくありません。
 おばあちゃんは手を組んで唸りました。
「なかなか面白いじゃないか。……和穂!」
「は、はいぃ」
「このことは親に言うんじゃないよ。被害届を提出するのも不可だ」
「ど、どうして?」
 おばあさんは、それはそれはとても素晴らしい笑顔で言いました。
「やつを私の手で仕留めたいからさ」



-ももたろう-

 むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
 ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
 さて、おじいさんが山で芝刈りと見せかけて魚釣りを楽しんでいると、どんぶらこ、どんぶらこと体長180cmほどの大きな桃が流れてきました。
「むっ、面妖な。もしや、偽祝の差し金か」
 行け、眼破とおじいさんが一声叫ぶと、どこからともなく大きな魚が現れました。魚はおじいさんが指さした方向、大きな桃へ飛びかかるとがぶっとかぶりつきました。
「ぅぎゃーーー!」
 これはどうしたことでしょう。偽祝の口の中の桃の中から産声が聞こえてきたではありませんか。ぅぎゃーーーー、ぅぎゃーーーー。どことなく、悲鳴に聞こえなくもありませんが気のせいでしょう。
 おじいさんは産声を耳にすると、それまでの狂気に満ちた笑みをおさめると、つまらなそうで命令しました。
「偽祝とは関係なさそうだな。腹をこわしてはいかんから、吐き出してしまえ」
 子供が可愛そうだから拾ってやろうとは微塵も思わないおじいさんの命令にしたがって、眼破はぺっと桃をはき出しました。粘着質な唾につつまれて、形の崩れた大きな桃はまたまた、川を流れていきました。

 さて一方のおばあさんは、川で洗濯をしていました。男物の下着が川に竿建ててられていますが、洗っているつもりなのでしょうか。
 おばあさんが自分の服だけごしごしとまじめに洗濯していると、上流から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。ところどころ囓られてしまったかのように形が崩れています。
「誰だ、あんなものを捨てたのは?」
 おばあさんは見なかったことにしました。桃はどんぶらこ、どんぶらこと下流へ流されていきます。どんぶらこ、どんぶらこ。

 こうして、弾勁の「桃の中に隠れて、おじいさんと一緒に食べるために桃を回収しようとして近づいてきた栄秋をぶすり」作戦はものの見事に失敗してしまいましたとさ。
 あ、ももちゃんスーツの出番が……。



-シンデレラ-

 シンデレラはとてもかわいそうな男の子。お父さんが再婚した意地悪な継母と継母の前夫との間にもうけた子供に虐められる毎日です。
「おらおら、しっかり働かんかい!」
 二十歳も上の女性と再婚したお父さんに恨みをぶつけたくても、継母に家を乗っ取られつつあるのに全然気づいてない馬鹿な静嵐父さんに何を言っても無駄だと弾勁は達観していました。なにしろ、
「いやあ、大変だねえ息子よ」
 などと言いながら、息子ともども使用人の格好で掃除しているのですから。
 そういえば、普段から父さんの財産を食いつぶして贅沢をしている継母たちですが、今日は一段と派手な服装で身を飾っています。弾勁は不思議に思い聞いてみました。
「そんなに着飾ったところで、老いは隠せやしないぞ」
 継母はおまえは馬鹿だね、と軽く嘲笑してから、
「お城で舞踏会があるからに決まってる」
 今ひとつ答えになっていませんでした。まあ、お話を進めるためなので我慢してください。
 長女が答えました。
「今日の舞踏会は特別なのよ。王女様がお婿を出席者の中から選ぶ一大イベント! 目指せ玉の輿!」
 父さんは不思議がります。
「あれえ? 王女様のお婿さんを決めるのに、女の君たちまで出かけるのかい?」
「馬鹿だねえ。王女だよ? 王宮の奥深くで女性にかしづけられて暮らしている身だよ。特殊な趣味に目覚めているかもしれないじゃないか!」
 説得力のあるような無いような難しい発言です。
「俺も行きたい」
「はっ! 玉の輿を狙って、いじめ抜いた私たちを見返すつもりだね。そんなこと、許してやるわけないではないか」
 シンデレラの魂胆はばればれでした。
 シンデレラと父さんを置いて、継母たちはお城の舞踏会に出発していきました。父さんはせっせと床を磨いていますが、シンデレラはそこまで卑屈にはなれませんでした。そんなとき、家のチャイムが鳴りました。
「どなたでしょうか」
「あ、ども」
 家の外には、黒いフードで顔をすっぽりと隠した人物が立っていました。その人の足下には黒猫がごろにゃーんと寝転がっています。
「なぜ、刀の宝貝ともあろうものがこんな役ばっかり……」
 黒フードの人物はフードを外しました。フードの下には、かわいらしい美少女の顔がありました。
「私は魔法使いです。あなたをお城の舞踏会に連れて行ってあげようと思い参上しました」
 シンデレラは喜びました。これで継母に一泡吹かせてやれるのです。シンデレラは真新しいタキシードとかぼちゃの馬車を用意してくれと頼みました。
 魔法使いは大きく頷きます。
「わかりました。それでは……あれ?」
「どうしたんだ」
「あっ、そういえば、私は仙術を封じられているんでした」
 魔法使いは頭をかいててへへと笑うと、チャオ♪と一声かけて消えてなくなりました。

 一方、そのころ王宮では……。
「……ふふふ、綜現、二人っきりね」
「ええ、あう、えと、その」
 王女様は、隣の国の王子様とよろしくやっていましたとさ。

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