季節は別れの時から巡り巡る。悲しみの傷もほぼ癒えた時、
甘美な、しかし且つ逃げ出したくなる悲しみを持つ誘いが彼女の元を訪れる。
『もう秋も終わりかな・・・冬、雪の季節がまたやってくるんだね』
今日の授業の復習をしながら、部屋の灯りで照らされた裸ん坊のイチョウの木を
なんとはなしに見上げてみる。この場所では、紅葉が始まったかと思う間もなく
冬が待ったなしにその顔を見せる。
『なかなか終わらないよー。ここはどういう意味なのかな。
お母さんに聞いてみようかな』
判らないところは部活が始まる前に香里に聞いていたけれど、
どうやらそこ以外にもちょっと・・・。
ドアの向こうからお母さんの声が聞こえてきた。
「名雪ちょっといいかしら?」
「うん、いいよ。あ、そうだお母さん、ねえ」
お母さんは部屋のドアを後ろ手で閉めると、
「また解らないところがあるのかしら?」
「うん。こことここと・・・」
お母さんは忙しい。朝早起きして朝ご飯にお弁当の支度。
わたしが学校に行った後には朝食のお片づけの後すぐに仕事に出掛けるみたい。
わたしが学校から帰ってきた時にはもう仕事から帰ってきているし、
そうしたら晩ご飯の支度にとりかかってる。
ご飯の支度はなるべくわたしも手伝うようにしているけどね。
こんなに忙しいお母さん。偶に家に来る香里たちは気付かないみたいだけど、
私にはちゃんと解っているんだよ。お母さんがこっそりと洩らす溜息。
目立たぬ場所に置かれている栄養剤は、近頃はその種類と使う量は増えていく一方。
でも、だからといってわたしが遠慮すると、お母さんは悲しそうな顔をしてしまう。
だから、わたしは何にもないように振る舞わないといけないんだ。
ようやく今日の復習も終わった頃、不思議に思って聞いてみた。
「ねえお母さん、用事があったんじゃないの?」
「あ、そうそう。忘れるところだったわ」
目を閉じて、お母さん得意のポーズ。
「このニュースを聞いたら、きっと名雪びっくりするわよ」
何だか、今日はお母さんは話題を引っ張っている。そんなに凄い知らせなのかな。
「いとこの祐一くん・・・いまは祐一さんね。覚えてる?」
記憶がフラッシュバックする。会ってから、今に至るまでの。
出会い。何か恥ずかしかった。でもすぐに仲良しになった。
待ちぼうけ。祐一は、ちょっと目を離すと何処かに行ってしまう。
別れ。また会おうね、と約束してから別れた。
再会。約束通り、次の休みに祐一はやって来てくれた。
その繰り返し。私の気持ちはちょっとずつ変わっていった。
そして・・・あの雪の日。無惨に崩れる雪うさぎ。
その翌日。そして、そして、そして・・・祐一は来ない。
手紙。わたしにとって大事な部分を省いた手紙。でも返事はまだだった。
そして、幾たびも雪の日は巡って来たけれど・・・
たくさんたくさん思い出はあるけれど、通り過ぎるのはほんの一瞬。
「うん、もちろん覚えてるよ。でも、祐一がどうしたの?」
「祐一さんのご両親二人揃って海外に転勤することになったの。
それで、祐一さんも連れて行こうとしたけれど、
祐一さんは海外へ行くのを嫌がったそうなの。
他人に預けるのも不安だし、親戚うちで受け入れてくれる所を探していたのよ。
だから、私が祐一さんを預かることにしたのよ」
え・・・? 祐一が、この街に来てくれるの?
過去への郷愁と痛み、未来への希望と不安がわたしの心を締め付ける。
お母さんはそれまでのにこにこ顔から少しだけ真剣顔をしていた。
「だから、それまでに自分の気持ちに少しでも整理をつけておくこと。いいわね」
わたしの気持ちは、千々に乱れて、とても収拾をつけられない程にざわめいていた。
祐一がこの街に帰ってくるという、その日になっても。
「楽しそうね、名雪」
「あれ、そう見える?」
人からはそう見えるのかな、わたしはとてもそんなに楽な気持ちじゃないのにね。
はあ・・・と香里は白い息をわたしの顔目掛けて吹きかける。
ちょっとこそばゆい。香里は手の平を上に向けて肘を曲げて、北川くんが見せてくれた
漫画の登場人物が呆れた時にするポーズを取っていた。
「それだけニコニコしておいてよく言うわ・・・」
「そんなわざとらしいポーズを取らなくてもいいのに・・・。
それにこれでも、わたしは迷っているんだよ」
あっ、言っちゃった。香里の事だから、この一言で完璧にばれたかな。
「そうね、昨日までは笑っていても表情に陰りがあったわね。
でも、今日は違うわ。本当に、今日の名雪は嬉しそう。
不安に負けるなんて、名雪じゃないわよ。ま、なるようにしかならないでしょ。
あ、もう部活の時間じゃない?」
もうそんな時間だ。部長さんなんだし、遅れないようにしないと。
「うん、じゃあね」
香里と話して、わたしは楽になった気がした。
後は、走りながら考えよう。きっと、走っていれば答えが見つかるよ。
「そう、なるようにしかならないのよね・・・」
誰へともなく呟いた彼女は、一つの視線に背を向けて歩き出した。
それは、まるで何かとてつもない恐怖から逃げ出そうとするように。
「それにしても、今日は一週間分くらい働いたよ」
うう、腕が痛くて持ち上がらないよ。明日は筋肉痛かな。
走るのに影響はないからいいけど。湿布貼った方がいいかな。でも臭うよね。
「だから、段ボールはみんなお前にくれてやるって」
「いらないよー。もっと他の物がいいよ」
「例えば何だ?」
「うーん、鉛筆とか、消しゴムとか」
「なんてつつましい奴だ。男ならもっと大それた野望を持たないとな」
「わたしは男の子じゃないよー。それに、段ボールもどうかな・・・」
祐一が来て今日で二日目。今のわたしたちの関係は、7年前のそのまま。
でも、この二日で判ったことは色々とあった。まず、祐一は7年前のこと、
それだけをすっかり忘れてしまっていること。
それはとても寂しいけど、安心するところもある。
あのことを思い出したら、祐一はまたわたしの前から消えそうな気がするから・・・。
わたしはただ待っていた。暖かさの欠片もない、冷えた駅前のベンチに腰掛けて。
わたしはいつまででも待つつもりだった。
せめて、せめていつ祐一が帰ってくるかを知るまでは。
わたしの足下には雪うさぎがいた。通りを過ぎてゆく人々は、
わたしを奇異の視線でもって貫いて、そして無関心に去ってゆく。
ふう。今日はこれまでと違って疲れを感じていた。
すぐにもこんな無駄な・・・そう、祐一はお父さんのところへ帰っていたから、
わたしのこれは無駄な行動。挫けそうになる。止めそうになる。
今すぐにでも家に帰って、お母さんの作る暖かいシチューを飲みたくなる。
眠いな。ちょっとだけ眠っちゃっても許してくれるよね、祐一。
あれ、ここはどこ? 周りは白い風景で囲まれているけど、
これは雪の白じゃない。これは、何にもない白。
ふわっ。わたしの目の前を、純白の羽根が通り過ぎてゆく。
羽根は地面に降りつもってゆく。
まるで、雪の代わりを自分が果たすのだ、と言わんばかりに。
そして、羽根の持ち主がわたしのすぐ側に降り立った。
お母さんが読んでくれたお話と違って、その天使は子供だった。
「ごめんね・・・ボクのせいだよ」
ボクのせい? 何がボクのせいなのかも、わたしには判らない。
「だからせめて、ボクが奇跡を起こしてあげる。これが、ボクのせめてもの償いだよ」
待ってよ、一体何のこと?
「じゃあ、また会おうね、名雪さん」
あなたの名前だけでも教えてよ。
「ボクの名前は・・・そうだね、その時になったらわかるよ。
祐一くんに会えるその日になったらね。これが、盟約の証だよ」
わたしの手にぱっと魔法の様に、天使のぬいぐるみが現れた。
わたしはその天使からの贈り物をそっと抱き締めた。とっても暖かいよ・・・。
「名雪、名雪、なゆき・・・」
目を開けると、お母さんの顔。何で、泣いてるのかな。
それに、私は・・・どこにいたんだろう。
思い通りに動かない手を握ってみる。何も持ってない。
「お母さん、天使のぬいぐるみは? 私は何処にいたの?」
「天使のぬいぐるみ? お母さんは知らないわ。それでね、あなたは病院にいたのよ」
病院に? どうしてだろ。目を向けるだけでお母さんは察してくれた。
「ずっと雪の中にいるから、風邪をこじらせたのよ。
全く、あなたがこんなに一途だったなんてね・・・。今日は寝なさい。
何もかも忘れてしまうくらいにぐっすりと・・・」
お母さんに言われるまでもなく、わたしの瞼は自然と閉じていた。
風邪が治って、やっと遊びに外に出掛けられたその日、
宝物探しごっこの最中、地面の下からわたしが掘り出したんだ。
夢の中のぬいぐるみとそっくりな、天使の人形をね。
やっぱり、あれは夢じゃなかったんだ。わたしは願った。
夢の中の天使と、そして祐一とまた会えるといいな。
今でも時々思い出す。祐一を待っている時に聞いた、時を知らせる時計台の音を。
それは、切なさと不思議な思い出を呼び覚ます。
ゴーン、なんていうありきたりな形容ではとても表せないそんな思い出を。
ガゴンッ! これは鐘の音じゃないよね。
バタバタバタッ! 鳥の羽ばたく音とはちょっと違うし。
ガドッデデッ! うーん、うるさいよう。
「うぐぅ・・・痛いよう」 うぐぅ、痛いよう・・・?
はあ。溜息を吐くしかないだろう? これでぶつかったのは何度目だ?
こんな間抜けでどうしようもない奴を、俺は一人しか知らない。
多分、これからも人数が増えることはないだろう。
思いっきりゆっくりと歩いて玄関へと向かう。もうそろそろ落ち着いたか、
といったところで玄関のドアをそうっと開いた。
そこには、予想通り羽の生えた変なランドセルを担いだあゆが・・・。
「ぶっ! ふっ、ふっ、ふっ、ふはははははははっ!!!」
「うぐぅ・・・そんなに笑い転げなくても」
「悪い悪い、いや何あのな・・・ふっ、くっくくくく」
俺が玄関で笑い転げていると、階段から足音が聞こえてきた。
北川たちは買い物に出掛けていて、この家にいるのは俺を除いて
名雪一人だけだったから、もちろんその足音は名雪のもの、ということになる。
しかし、笑えるなこれ・・・。
「おはよう、祐一・・・ふぁぁ。あゆちゃんもおはよう」
「名雪さん、おはようっ!」
「おいあゆ、年上に対して『おはようっ!』はないだろう?
この場合、『おはようございます』が正しいな」
「うぐぅ・・・同い年・・・」
「それは知っているが、とてもそうとは見えん」
「あれ、あゆちゃん髪型変えたの? それにその帽子、可愛いよー」
そう、あゆは髪をばっさりと切って、頭にかーくんの帽子をかぶっている。
珍しくジーパンを履いていて、まるっきり、大人になりたいと思っている、
けれどまだまだがきんちょのお嬢ちゃまの格好だ。
いつものランドセルを背負ってない事が残念でならない。
「ああ、ここ破れてるぞ・・・。ほれ、見せてみろ」
せっかくの新しい服(予想)だと言うのに、早速ダメにしやがって。
ん、みみず腫れが出来てるのか? いや、これは・・・。
あゆはとても慌てて俺に掴まれていた腕を慌てて引き剥がした。
愛想笑いを浮かべているつもりらしいが・・・明らかに失敗だ。
「あゆ、これは点滴の痕じゃないか。一体どうしたんだ?」
病院で秋子さんを見ていなければたんなるみみず腫れだと思っただろう。
だが、これはそんな傷じゃないともう俺はよく知っている。
俺は強引に他にも傷がないかどうか確かめてみた。
やっぱり、無数の痕がその腕に刻みつけられていた。痛々しいほどに。
「実はね、ちょっと肺炎にかかちゃって、点滴を打って貰ったんだよ」
嘘だ。それならば、これほど点滴した場所が多いはずがない。
俺はあゆを思いっきり厳しく睨み付けた。
途端にあゆはしょんぼりして白状するように見えた。
「ええとね、実は車とぶつかって大怪我しちゃって。
生きるか死ぬかの境目を彷徨っていたんだ」
まあ、そんなところだろう。それならここんところ姿を見なかったわけも判る。
なのに、俺の勘はそれも違うと訴えかけていた。
あゆの目を見る・・・こいつは、まだ嘘を言っているな。
「ほ、本当だってば。うーん、本当に死ぬかと思ったよ」
いかにもわざとらしい口調で言っては説得力が無いぞ、あゆ。
「そ、それより秋子さんはどうしたの? ボク今日は御馳走になったお礼に
お菓子を持ってきたんだけど」
間の温度が急速に下がった。名雪と俺の顔は凍り、事情の解っていないあゆは
困惑の目を辺りにせわしなく向けている。
「ああ、今案内するよ」
真っ黒い式壇。その真ん中に、秋子さんはいた。
「・・・え? 嘘、だよね」
あゆは信じられない物を見た、と訴えて俺を見つめる。
俺だって何度これが嘘だったら、夢だったら目が覚めて秋子さんがいつもの微笑みで
朝食を用意してくれたらと、思ったことか。
普通はここで湿っぽくするものなんだろう。だが、そんな事秋子さんは望んでない。
さて、どうしようか何を言おうかと俺は考えていた。
「出ていって!」
あゆが叫び声を張り上げた。余りに突然の悲鳴。そう、悲鳴だ。
「出ていってよう!」
ぐしゅぐしゅと鼻をすすりながらあゆは俺たちに懇願していた。
でも、何でだ? 何であゆが『出ていって!』だなんて言うんだよ。
「お願い、ここから出ていって!」
三度目の悲痛な声は部屋中と言わず家中を震わせた。
俺はそんなあゆに近寄りがたいものを覚えた。ここは言うとおり下がるしかないか。
落ち着くまですぐ外で待ってるか。俺は名雪を促して共に部屋から出ていこうとした。
「・・・名雪さんは、ここにいて」
もはや俺には全く訳が分からない。あゆが俺たちを拒否した訳に
名雪を残すよう指名した訳。助けを求めて名雪の顔を見る。
名雪は、任せて、大丈夫だよ、と言わんばかしに力強く頷いた。
今、部屋にいるのはわたしとあゆちゃんの二人だけ。
あゆちゃんはまだお母さんの前で泣きじゃくっている。
こんな時、テレビのドラマだったら『ダメだよあゆちゃん、
そんなんじゃお母さんが悲しむよ』って言うよね。
でも、今言わないといけないことはそんな事じゃない気がするよ。
「ボクの・・ボクのせいだ」
「・・・あゆちゃん?」
「ボクが・・・ボクがあんな事を考えたから、秋子さんはあっ!」
バサッ。鳥の羽ばたきの音、それはあゆちゃんの背中に生えた羽根から出ていた。
あゆちゃんがいつも背負っていたランドセルに付いていた偽物じゃない、
本物の、天使の、羽根。
「そうか・・・あの時の天使はあゆちゃんだったんだ。お陰で出会えたよ」
わたしの感謝の言葉に、何故かあゆちゃんは傷ついた顔を見せる。
「違う! ボクは感謝されるような事は何もしてない! ボクは、ボクは・・・」
「どうしたのあゆちゃん? あの時の天使は・・・」
「ボクは・・・本当に嬉しかったんだ。祐一くんと、また会えて。
ボクは二度と祐一くんとは会えないと思っていたから」
そうだね、わたしも同じ気持ちだったよ。
「ボクは祐一くんが大好きだったよ。祐一くんもそうだった。
でも、あんな事が起きてしまって―ボクは祐一くんを傷つけてしまった。
ボクは辛うじて生きていたけど、祐一くんはボクを自分のせいで殺してしまったと
勘違い―ううん、自分を責め続けて、ボクに関する記憶を全部消して」
あのときの、『ボクのせいだよ・・・』だよね。
「7年経って祐一くんに会って、祐一くんはボクを思いだしてくれた。
ボクは言葉では言い表せない程幸せだった。
まあ、7年ぶりの感動の再会には失敗したけど・・・」
?? 後で祐一に何をしたのか聞いてみよう。
「これで、7年前からやり直せると思ったんだ。でも気が付けば」
「側に、わたしがいた」
あゆちゃんの言葉を引き継いでわたしが言った言葉に、あゆちゃんは同意する。
「悔しかったんだ。許せなかったんだ。そんなの自分勝手な我が儘なのに。
だから、二人が別れてしまえってそう、思ったんだよ」
まさか、あゆちゃんはその所為でお母さんが?
「ボクが、そんな事さえ思わなければあっ!」
ゴウと風が部屋中を荒れ巡った。わたしは、その烈風なんて無視して、
小柄なあゆちゃんの体を優しく抱き締めた。
「けれど、あゆちゃんのお陰で、わたしは祐一と出会えたよ。
そして、あゆちゃんにももう一度」
「・・・ボクにも?」
「そうだよ。あゆちゃんが来てくれたあの日から、わたしは前を向いて
歩けるようになった。もしあゆちゃんが来てくれなかったら、
祐一がこの街に来るかもしれないと聞いたとき、それを断ったと思う。
自分から逃げちゃったと思う。だから、ありがとう。
祐一を連れてきてくれて。また、わたしにその姿を見せてくれて」
「ううぅ・・・わあああっ」
あゆちゃんがわたしに強く抱きついてくる。わたしはその背中を
そっと撫でてあげる。すると、背中の羽根は”すっ”と消え去った。
こうしてると、とてもあゆちゃんは同い年とは思えない。
一人苦しんでいたあゆちゃんは、7年前のわたし。
7年前にお母さんがしてくれたように、あゆちゃんの頭を撫でてあげる。
「あゆちゃん、あの時のぬいぐるみ、大切にしまってあるよ。
後で見に行こうか?」
「・・・うん。そうだ、あれはね、祐一くんからのプレゼントなんだ・・・」
「え、そうなんだ。それで・・・?」
親子のように、囁いて会話を交わす二人。
奇跡の光を浴びて佇む二人は、過去の呪縛から逃れ出て、
再会の喜びを分かち合っていた。
次回予告
「あたしは奇跡を手放したのよ。でも、一番それを望んでいたのは・・・」
臨終の夜、彼女は街をどこへともなく彷徨っていた。
決して吐露されなかった想いは天に聞き届けられたのか。
「あれ、美坂さんじゃない。どうしたんだよ、一体こんな時間に・・・」
次回、session 4 Confession which kept to ...