スチャラカもくれんタマスダれ
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ま〜じかる☆対策会議

キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。
「起立、礼! 着席!」
六時間目のチャイムが鳴った。今日の六時間目は担任の授業だったので、そのままHRになだれ込む。あってもなくてもいいような注意をすると、教師は逃げるように教室を去っていった。
「ふあーーーあぁ。よく寝た」
だが、まだまだ俺は眠かった。だから寝る。寝る子は育つからこれで正しい。
「あーーーのーーーねーーー。けーーんちゃーーん」
「日和、一時間半後な」
「えっ、えっ?」
ちなみに一時間後でもなく二時間後でもないのは、二時間後に夕食があるからである。では、お休みなさい。
「ねえーー、けんちゃんーー、起きて、よーーー」
ぐー。ぐー。
「ねえーー、けーーんーーちゃーーーん」
ずだだだだだだだだ! ききっ! がらっ!
「先輩!」
ぐーぐー。ぐーぐーぐー。
「おーーきーーーてーーーよーーー」
「小野崎先輩、先輩はどこですか! って、あれ? 先輩? 小野崎先輩はどこですか?」
「あのねー、清香ちゃんはねー、今日は、お休みなんだよー」
「小野崎先輩、隠れんぼなんて酷いですよ! 身長考えたらあたしの方が圧倒的に不利じゃないですか! いいえ、寧ろ身長150cm以下は参加できないようルールを変更すべきです!」

「くちゅん!」
「清香ちゃん、大丈夫?」
「んー、健二の馬鹿が私の悪口を言ったんじゃない?」
「それならいいんだけど……」

「あのねー、進藤さーーん、きーよーかーちゃーーんーはー」
ぐーーーーぐーーーー。カレー、グー!
「あ、進藤さんだっけ? 小野崎さんなら今日は風邪でお休みだよ」
「ありがとうございます! 名も知らぬ先輩! それで先輩は?」
「ぐよぐよぐよーーー」
「だから小野崎さんは休みだよ」
「いえ、小野崎先輩じゃなくて片瀬健二先輩です」
「片瀬くんなら、あそこで寝てるんじゃない?」
「あ、ほんとですね。ありがとうございます、名前すら設定されてないクラスメイトの方!」
「ぐよぐよぐよー」
「ああもう、日和先輩は黙っていてください! さあ先輩、付いてきてもらいますよ?」

肩から先が引っ張られる感覚に俺は目を覚ました。
「ダダダダダダダダーーーっしゅ!」
視界がもの凄い速度で移動している。しかも、俺の足は地に着いてない。すなわち空中浮揚。
「しょーこー、しょーこー、しょこしょこしょーこ。A・Sa・Ba・Ra・しょーこー♪」
と楽しく歌っている場合ではなかった。気が付けばすぐ前に階段(角)が迫っているじゃあーりませんか!
「ちょっと待て、進藤!」
げすっ! がすっ! ごすっ!(以下、あまりにも残酷な表現が続くため削除)

「あ、日和お姉ちゃん、お兄ちゃんは?」
「うわーーーーん」
「わっ、どうしたの」
「進藤さんがーー、進藤さんがーーー」
「日和ちゃんがお兄ちゃんを起こそうとしたんだけど、起こす前に進藤さんに拉致されたんだね?」
「……うん。ごめんね、雪希ちゃん」
「どうして「進藤さんがーー」だけであそこまで分かるのかしら?」
「さあ、シンパシーって奴じゃない?」
「そうね。なにしろまじ……」
「しっ! 変身したらどうするのよ?」
「そ、そうね……」
「お困りですか?(x2)」
「ひいいいいっ!」



「と、いうわけで!」
「待て進藤」
「どうしたんです、先輩?」
「俺の怪我はどうしてくれる」
「健康保険で払って下さい」
俺の要求はあっさりとかわされた。今日の進藤はひと味違うぜ。
「それでは今より、まじかる☆シスターズ対策会議を始めます!」
「……ぱちぱちぱち」
麻美先輩が律儀に拍手(の声だけ)をしていた。
「何だって?」
俺は聞き返した。
「それでは今より、まじかる☆シスターズ対策会議を始めます!」
「……ぱちぱちぱち」
やっぱり律儀に拍手(の声だけ)する麻美先輩は取りあえず意識の外に追い出して、俺は質問した。
「そのなんたら会議のために、俺の睡眠を邪魔したのか?」
「イエス、アイ、ドゥ!」
ばりばりの日本人英語で答える進藤の頭を掴んで、こめかみをぐりぐりする。
「そのなんたら会議のために、俺の睡眠を邪魔したのか?」
「そうに……決まって……るじゃな……いですか」
「決まってない! 俺の睡眠時間を返せ!」
「無理ですよ。てゆーか、早く離してください……ああ……天国のひいおばあちゃんが呼んでいます」
「……落ち着いてください、健二さん」
肩に触れた麻美先輩の手は俺を正気に引き戻した。
「ああ、済まない麻美先輩」
「なんで麻美先輩の言うことは素直に聞くんですか?」
「当然だろ? なんたって麻美先輩なんだから」
「……ぽ」
「麻美先輩……」
「……健二さん……」
「だあーーーっ、二人の世界を作ってないで、こちらに戻ってきてくださいよ!」
進藤の大声で雰囲気ぶち壊しなので、仕方なく現実に戻ってくる俺。
「で、なんだって?」
「決まってます! まじかる☆シスターズ撲滅大会です!」
「……ぷるぷるぷる」
さっきと微妙に違う題名には突っ込まない方がいいんだろうな、やっぱし……。
「つーか、前にも同じようなことがあったような」
「Bad! 気のせいです。気にしちゃいけません」
「……分かりました」
妙なタイミングで先輩が口を出した。いつもより早いな。どうかしたんだろうか。
「さっすが麻美先輩! これはつー、かー、ですか? 以心伝心拈華微笑、心と心が通じ合ってるんですね? 先輩が分かってくれて私も――」
「……お歳暮ですね」
「へ?」
「……日頃お世話になっているまじかる☆の皆さんに、お歳暮を贈ろうと思っていたんです。健二さん、お雑煮セットとお汁粉セット、お赤飯セットのうちどれが良いと思いますか?」
「そうですね。今の時期だと、お汁粉セットなんかいいんじゃないでしょうか」
「……貴重なご意見ありがとうございます」
「それでは麻美先輩、帰りましょうか」
「……はい」
ま、家で寝てればいいか。時間になれば雪希が起こしてくれるだろうし。俺は自宅に足を向け――
「違います! あの法律違反な二人を取り締まらないと日本の未来はないんですよ!」
「……と言われましても」
「そうだな。被害を被ったわけでもないし」
「甘い、甘い、甘いですよ。特に健二先輩!」
「甘いって、何がだ?」
「兄として、雪希ちゃんをあのままにしていいと思っているんですか? 特にあの服!」
「む……」
確かに、兄としてあの格好は俺が独り占めにしておきたい。
「いいですか、もし悪い人にひっかって」

「ああ、困った、困った」
「お困りですか?」
「ああ、とっても困っているんだよ」
「それなら、魔法のハンマーで即解決♪ まじかる☆シスターズ、だよーん」
「へっへっへ。実は、私の息子が鎮まらなくて困ってるんだよ。君たちの舌でどうにかしてくれないか?」
「分かりましたぁ♪」
「ちょっ、ちょっとひよりん、そんな簡単に」
「だってー、この人困ってるんだよ?」
「うう、困った困った」
「全然困ってそうにないんだけど」
「うう、困った困った」
ぴくっ。
「うう、困った困った」
ぴくぴくっ。
「ああああ、困った……」
「分かりました。はぁい、まじかる☆雪希ちゃんにおーまかせだよ♪」
「へっへっへ。良い子だねえ。じゃあ、まずは――」

「なんてことになってしまうかもしれないんですよ! ああ、なんて可哀想な雪希ちゃん!」
「いや、どちらかというと、んなことを学校でシャウトするお前の方が可哀想なんだが」
「……こくこく」
「……」
「恥ずかしくないのか、お前?」
「うぅ……しくしくしく……」
「……進藤さんを泣かせちゃダメです。めっ」
「ごめんよ、麻美先輩」
「……分かってくれたんですね」
「ああ、俺が間違っていたよ先輩!」
「……健二さん」
「さあ、あの夕日に向かってダッシュだ!」
「……だっしゅ」
「って、うまく誤魔化して逃げようたって、そうはいきませんよ? 世界平和のため、日本平和のため、そして何より私の平和のために!」
ちっ、気づきやがった。まあ、確かに兄としてマイシスターにあんな恥ずかしい格好で歩かせるわけにはいかないよな。あれじゃあまるで――

「あっ」
「ふっ、どうした。膝が震えているぞ?」
「お、お願いです。リモコンを、リモコンを」
「ああ、分かってるさ」
俺はまじかる☆雪希の秘所に取り付けたバイブのスイッチを最大にした。
「あああっ!」
これまでどうにか押し殺してきた快楽の叫びを上げるまじかる☆雪希。

「なんか顔がにやけてるんですけど、先輩」
「……変態です。めっ」
はっ! ついあさっての世界に潜り込んでしまった。
「分かった進藤、雪希のためお前に協力しよう」
俺は進藤の手を強く握った。

経験値が5手に入った!
ちゃららっ、ちゃっ、ちゃっ、ちゃーん♪
健二はLVが上がった!
進藤との熱い友情が成立した!
おとな進藤シナリオのフラグが消滅した!

「よし進藤、俺に任せておけ!」
「任せておけ、はいいですけど、ナイスなプランがイグジストするんですか?」
「はっはっは、俺に任せておけば万事解決だ、進藤くん。泥亀に乗ったつもりで安心していたまえ」
「泥船ですらないんですね……」
「……こくこく」
かくして、『まじかる☆シスターズ捕獲作戦』は幕を開けたのだった。



「いいか、説明した通りにやるんだぞ」
「あの先輩、一つだけ大きな疑問があるのですが」
「なんだ?」
「どうして私が実行役なんですか?」
「いいか進藤。何かを成し遂げるには犠牲が付きものなんだ」
「分かったような、うまくはぐらかされているような……」
ぶるぶるぶる。携帯からの呼び出した。麻美先輩からの電話か。ナイスタイミン♪
「……二人は出発しました、長官」
「うむ、二人は変身していたかね」
「……こくこく」
「分かった、それでは所定のポイントへ移動したまえ」
「……らじゃー」
「何故に長官口調……」
「では検討を祈っているぞ、進藤隊員」
「うぅ、なーんか嫌な予感」

「あー、困った、困ったよー(棒読み)」
「……ぱたぱたぱた」
「おっ、麻美先輩。早かったな」
「……はい。親切な方々に運んで頂きましたから」
「親切な方々?」
「えへへー。まじかる☆ひよりんだよー」
「はぁい、まじかる☆雪希ちゃんだよ」
俺が思っていた以上に麻美先輩は肝が太いらしかった。
「あっ、困っている人、発見ーーー。行くよ、雪希ちゃん」
「うん、ひよりん」
「あー、困った、困ったよー(棒読み)」
「お困りですかー?」
びくっっ。がくがくがくがく。
「えへへー。まじかる☆ひよりんだよー」
「はぁい、まじかる☆雪希ちゃんだよ」
「い、いいえ! 困ってなんかいません!」
進藤のヤツ、土壇場になって恐怖に負けやがった。俺はブロックサインで進藤に指示を出す。
オマエ、コマッテル。イケ。
「オマエモナー、ウホッ?」
なんで2ch用語が出てくるんやねん!
「でもー、さっき、困ってるって、言ってたよー?」
気にせず話を進めるぽんこつさん。こんなときは便利だった。
「え、ええと……そう、困ってるんです!」
よく言った進藤!
「分かりました。では、何にお困りなのですかぁ?」
「ワタシ、コマッテルアルヨ」
「落ち着いて、進藤さん」
「実は、とある先輩に相談をもちかけられたんです」
「ふむふむ(x2)」
「その先輩が言うには、もう直りようのないぽんこつに悪影響を受けて、大切な妹が悪の道に走ってしまったそうです」
「ぽ、ぽんこつ?」
「ええ! ぽんこつですとも! なんでも、そのぽんこつと妹さんは夜な夜な昼な昼な朝な朝な家を抜け出しては、恥ずかしい衣装で街を練り歩いているらしいです。その先輩は妹さんをとても大事に思っていて、両親から託された大事な妹が誤った道に進むことを止められなかったことを悔やんでいるらしいです」
「お兄ちゃん……」
「先輩が言うには、『君たちは包囲されている、大人しく投降したまえ。お母さんも泣いているぞ!」ということらしいです」
俺はそんなこと言ってない。進藤のやつ、エンドルフィン出し過ぎだ。
「そして最後にこう言ってました。『俺の可愛い雪希、頼むから昔のお前に戻ってくれ』と」
「……いい話です……」
隣で麻美先輩が貰い涙していた。
「お兄ちゃん……」
「ね、ねえ、私は? けんちゃんは私のことどう言ってたの?」
泣き顔の日和を見て進藤の瞳が怪しく光り輝く。
「『あの悪の根元め、よくも俺の雪希を誑かしやがったな! 今度裸にひん剥いて校庭百周させてやる! いや、それだけじゃ生ぬるい』って言ってましたよ」
「えっ……」
嫌な予感が背筋を走った。
「ありがとう、お兄ちゃん。でも、私、もうちょっとだけまじかる☆雪希ちゃんとして頑張っていきたいんだよ」
「『あのぽんこつにはもう愛想がつきた、絶交だ、二度とあいつとは口を利かない!』とも言ってましたっけねー」
「うぅ……」
ビフォー、ティアーズ三秒前!
「おねがい、お兄ちゃん。もう少しだけ、もう少しだけ待って」
二秒前、一秒前!
「まあ、ぽんこつだからこそ日和なんだし。しょうがないよな」
「進藤さんのぉ」
「え?」
よし、矛先は逸れたぞ!
「ばかぁあああぁぁあああぁあぁーーー」
がしゅっ、めしゅっ、ぎゅきゅるるるる!
「グッドラック、進藤」
「……です」



『こうして今日も、まじかる☆シスターズは大活躍です。魔法のハンマー(光線)で何でも解決(だよ)♪』
『ど、どうして私だけこんな扱い……ガクリ』

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