封仙娘娘追宝録   断罪編

書いた奴  呉石 引尊





プロローグ  「金がないのは首がないのと一緒だねえ」と誰かが言った


                          



お金がないの。



私は自分で独りごちたその言葉に愕然となる。
断縁獄からいくら呼び出しても、お金や護玄さまが持たせてくれた銀が出てこない。

懐の財布を取り出し、探ってみる。

・・・財布の中は寒々しい景色を写すのみ。


気が遠くなった。


隣に座っている女性(本性は刀の宝貝だ)が気遣わしそうに私をみつめている。

力無く首を振る私。

沈痛な面持ちに替わったその女性に、すがるようなまなざしを向けてみる。

さらに沈痛な表情になり、私よりも力無く首を振る女性。

その声無き、しかしなによりも雄弁な返事にもめげず、
私は「私を絶対に守る」と兄に誓ったはずの旅の同行者に協力を仰ごうとした。

が、

力無く微笑み、涙を浮かべて首を振る女性の表情が、
「それはここにいる全員の事を指しているの」という表情だと理解した時。


私は希望という名前の扉が閉ざされる音を確かに聞いた。







くりかえすにちじょうのなかにあるかわりないもの。
いつでもそこにあるみなれたふうけい…
ふゆ。
このせかいがじぶんにとってかけがえのないものだということを。
はじめてきづいたしゅんかん…
「えいえんはあるよ」「ここにあるよ」
きせつはめぐり、やがてきせつはようこうに・・・




・・・少し意識が圏外にいっていたみたい。


・・・とりあえず私が何を言いたいのか、ぶっちゃけて言うと、

この日、この時、この場所で、


路銀が尽きてしまったの。



・・・なにかしら、酷く喉が乾いている。
それにこの体の震えとうるさいくらいの動悸はなんなの?

私の不審な挙動が気づかれたのだろうか?
店員の見る目が少し変わったような気がする。
私と隣にいる刀の宝貝以外の三人はまだご飯をかきこんでいる。
そう。
この飯店のこの卓にいるのは五人、残りの三人はこの状況に気づいた様子は微塵も無い。
ただひたすら目の前の食事を人に取られないよう、かたずけるのにご執心だ。

「欠食児童」

ふとそんな言葉が脳裏をよぎる。
連中は本来食事を必要としない。
このままだと本当に欠食児童になるのは私一人。
・・・随分理不尽だ。
さらに言えば、それは決して遠い未来ではない。




・・・話を戻そ。



路銀が尽きました。

路銀が尽きた。

路銀が尽き・・・

ロギンス師範代・・・


幾ばくかの空白が過ぎ、その虚ろな言葉を反芻してみる。
私は多少混乱している脳を再起動させ、武器の宝貝がするように情報と状況を分析してみる。
・・・すでに結論は出ている気もするけど。
頭の中で処理しきれない(きっとしたくなかったのだろう)情報が、ぐるぐると駆け巡っている。



・「路銀」旅をする際道中必要な資金宝貝回収の旅はまだまだ終わらないそれがないと食べて
行けない私を守るはずの刀の宝貝×2は兵器の宝貝と争うように次々と注文しては料理を食
べているどうして食事の必要のない宝貝があんなに大飯ぐらいなのどうしてご飯の味にこだ
わるのああ卓の隅には伝票がそろそろ山をなしているお金を払わなかったらそれは食い逃げ
ご飯代だけじゃない宿代もいるのにそうそう私も女の子だもの可愛い服も着てみたいそのお金
は路銀から出るのにもしかして私無一文なの何故なにこれは現実なのどうして私ここに居るの
封娘八巻絶賛発売中奮闘編もよろしくね「路銀」旅をする際道中必要な・・・




羅列された情報を頭が理解していくにつれ、


「ふぅ。」


視界が急速に暗くなり、


どさり


私は意識を手離した。



「和穂!」



(続く・・・のか?)



次回予告

悪いのは一体誰なのか?

誰が罪を贖うのか?

贖う術はあるのだろうか?

人は許しを求め続ける。

罪が許されるその時まで。

だが、罪人は知らないのだ、

振り向けばそこに光がある事を。


次回 第一章「許されざる者」(笑)

あとがき(なんかえらそう)

ども、呉石っす。
スチャもくのトップページで「断罪編」の名前を見つけて仰天し、
慌てて修正版を送りつけた次第であります。
初版は後で見直すと、行間とかすごい大雑把だったので(WORDなんかで書くからだ←あほ)
内容としては・・・ごらんの通り宝貝回収ものではないかも(気分によって変わります)へっぽこですねえ(苦笑)。
あ、一応お笑いSSを目指してます。和穂さんの性格がちょっとヘンなのもそのせいです。
一人称形式は難しいなあ。
え、なにが断罪かって?それはおいおい。

最後に、こんな頭の悪いSSを掲載してくださった紅魚さんに感謝の意を。